第122回サロン・ドートンヌ2025
参加リポート

「サロン・ドートンヌ」は、「秋季展」を意味するフランス最大の芸術展で、世界48カ国以上のアーティストが参加しています。
1903年10月にフランスで第1回の展覧会が開催され、ベルギーの建築家フランツ・ジュールダンをリーダーに、アンリ・マティス、ジョルジュ・ルオー、エドゥアール・ヴュイヤール、アルベール・マルケ、ピエール・ボナールらが中心となり、保守性に対抗して創立されました。
第1回展ではゴーギャンの特別展が同時に開催され、「フォーヴィスム」が誕生した展覧会として知られています。 第2回展では、ドイツ表現主義など1,600点以上の作品が出品され、さらに特別にセザンヌの展示室も設けられました。1908年にはジョルジュ・ブラックの参加によって、「キュビスム」が誕生。「サロン・ドートンヌ」は、前衛的な新進気鋭アーティストが世界へ躍進するための華々しい第一歩となる舞台です。
一般出品は、フランス人、外国人を問わず、公平かつ厳格な審査基準に基づいた審査が行われ、「世界で最も選出が難しいサロン」とされています。
また、サロン・ドートンヌには「賞」の選出はなく、審査を通過したアーティストは有名無名に関わらず、全て同等の実力とみなされます。官営サロンへの反骨精神が息づいています。

122 ᵉ édition – Salon d’Automne 2025
●会期:2025年10月29日~11月2日
●会場:パリ・Place de la Concorde内 特設2パビリオン(総面積 4,000 m²)
●参加国数:48ヵ国以上/参加アーティスト数:1,000名超

■展示構成とテーマ
本展は、絵画・彫刻・版画・ドローイング・写真・環境アート・神話と特異性・未知の世界・デジタルアート・アーティストブック・建築の11セクションにより、今日の多様な芸術潮流が展開されました。
本年は「La Mer en Commun(共にある海)」というテーマが設けられ、海洋保全を軸にアーティストの作品と科学データが対話する専用スペースや、講演・討論・映像上映など教育的プログラムも併設されました。

■会場体験と訪問動向
さながら巨大な現代美術館を訪問したかのように、膨大な数のスタンドが果てしなく並ぶ光景は圧巻の一言です。
全部のスタンドを回るのは至難の業であったという声も聞かれます。
会場構成は、コンコルド広場のオベリスクを境に二つの簡易パビリオンに分かれ、ルーヴルやエッフェル塔を望む秀逸なロケーションとなっていまふ。
日本のスタンド(A-54 ARTEC JAPON)はカフェ隣接の好位置に配置され、多くの来場者の流れを捉えていました。また、私たちのスタンドにはパリ市長や日本大使館の文化担当者も訪れ、初日にはテレビの取材、30日にはインタビューも行われました。

■来場者傾向と交流機会
ヴェルニサージュは10月28日夜に開催。
参加アーティストやギャラリー関係者が集まり、ゲート前には開場前から待機列も現れ、開幕の盛り上がりを印象づけました。
会場内の通路では、グラス片手に歩く来場者の姿が目立ち、展示ブースでは日本人アーティストの前に立ち止まり、片言の日本語で話しかける来場者もおり、年配の方から若い日本語学習者まで、“日本文化への関心”が会話を生んでいました。
アクセスの良さと会場の開放感から、昨年のシャンゼリゼ開催よりも来場者には好印象だったようです。

出展 : @eda75/Open Mag

■総括
Salon d’Automne 2025は、フランス国内で注目度が高く、多方面から「ARTEC JAPON、JAPAN ART REPUBLICのスタンドを見ました」というご連絡や様々な展覧会参加のオファーが寄せられており、想定以上に反響がございました。
新しい出会いが生まれるきっかけであり、これまでの交流もさら絆を深める場であることを確信しました。
大きなコストはかかりましたが、それ以上の価値を見いだせる成果がありました。
Salon d’Automne 2025 は、世界48か国から集った約1,000名のアーティストが出展し、芸術の多様性と創造の自由を体現する場として、改めてその国際的地位を示しました。
その中で日本人アーティストの作品が確かな評価を受け、多くの来場者の印象に残ったことは大きな成果であり、これまで築いてきた日仏両国の芸術交流の努力が確実に実を結んでいる証でもあります。